菜の花プロジェクトネットワーク設立趣旨

1 趣 旨

 私たちは、約500万年の人類史の中で、資源とエネルギーの両面で地球の限界に遭遇しており、私たちは、もはや一方的に自然からの恵みを受け続け、物的豊かさを享受し続けることは許されない状況におかれている。

 有限で劣化する地球の上で、今の豊かさを維持しながら人類の生存を確保していくためには、物的豊かさと引き換えに地球環境を悪化させてしまった「大量生産・大量消費・大量廃棄」の一方通行型の経済社会を、環境負荷の少ない「資源循環型」の経済社会に、一刻も早く転換させていかなくてはならない。

 私たちが「資源循環型社会」を構築していくためには、それぞれの地域の特性を生かし、地域単位で、コンパクトでシンプルな生活構造をつくることが必要であり、同時にそれを支える新しい発想、価値観、技術、仕組みにもとづいた産業構造をつくりあげていくことが求められている。

 2001年春に、日本列島の各地から「菜の花」で結ばれた仲間が「菜の花サミット」に集い、菜の花プロジェクトの体験交流を通して、その考え方、価値観、行動様式などを交換しあい、この菜の花サミットにおいて、全国各地の循環型社会づくりに取り組んできた知恵と力を相互に交換、交流し、その成果を全国各地に広げていくことが、新しい日本の創造につながることを確認しあった。

 私たちは、2001年の菜の花サミットにおいて、交流された菜の花プロジェクトの知恵や知識、意見や情報が大きなうねりとなり、全国に広がり、各地に根付き、地域から日本を資源循環型社会づくりに向かう明るく元気なエネルギーになっていくよう、「菜の花プロジェクトネットワーク」を設立した。

 そして、その後の活動を通じ、菜の花プロジェクトのネットワークは全国各地に広がりを見せ、バイオマスに注目した地域自立の資源循環型社会モデル創造活動として、各方面から注目されている。

 こうした中で、私たちは、地域の人々のイニシアティブで生まれ、循環型社会の地域モデルになった「菜の花プロジェクト」をさらに力強く押し進めるため、菜の花プロジェクトへの政治の参加、地方自治体の参加、企業の参加、学術研究セクターの参加を強く働きかけ、産・官・学・民の真のパートナーシップにもとづく循環型社会づくりを進めるため、全国で菜の花プロジェクトを実践する人々による「特定非営利活動法人菜の花プロジェクトネットワーク」を設立するものである。

2 申請に至るまでの経過

【第1期】廃食油を回収してせっけんにリサイクルする活動を展開した時期

1976年 このころより廃食油回収がスタート。現在、廃食油回収ポイントは、滋賀県下に約400カ所にまで広がってきている。

1977年 琵琶湖の大規模な赤潮発生をきっかけに「せっけん使用運動」が始まる

1978年 「琵琶湖を汚さない消費者の会」が設立される。80年ごろには、参加世帯数が5万世帯に広がる。

1979年 「琵琶湖富栄養化防止条例」制定、公布。

1980年 せっけん使用率が70.6%を記録。

1982年 80年をピークにせっけん使用率が減少。「粉石けんだけ」が半数を割る。

1990年 「滋賀県環境生活協働組合」設立総会が開催される。

1991年 せっけん運動の新たな展開を求めて「リサイクルせっけん協会」が設立される。

【第2期】廃食油をディーゼルエンジンの燃料として活用する活動を展開した時期

1992年 廃食油からリサイクルせっけんをつくるミニプラント「ザイフェ」が開発される。せっけんだけへのリサイクルに限界が見え始め、新たな利用方法の模索が始まる中で、ドイツのナタネ油燃料化プログラムと出会い、ドイツの情報も含め、廃食油の燃料化に向けて情報収集を始める。

1993年 滋賀県工業技術センターの助力で、実験室レベルで廃食油燃料化の可能性を求めて実験を開始。滋賀県環境生協の車両、漁船、農耕機械などでのBDF燃料の使用テスト開始。テストプラントのフローづくりを開始。

1994年 環境庁(当時)の補助を受け、旧愛東町にテストプラントの設置を決定。大阪市にあるメーカーにテストプラントの製造を依頼。

1995年 旧愛東町にテストプラントを設置。「エルフA型」の設計・製造を開始。

1996年 旧愛東町のテストプラントを、「エルフA型」に。

1997年 旧八日市市に「エルフA型」を導入。

【第3期】菜の花作りから地域内活用までの資源循環サイクルをつくる活動を展開した時期

1998年 香川県善通寺市、旧新旭町社会就労センター、新潟県上越市などで「エルフA型」を相次いで導入。旧愛東町で「愛東イエロー菜の花エコプロジェクト」がスタート。菜の花の苗づくりが始まる。

1999年 北海道古平町社会就労センターに「エルフA型」導入。「エルフA型」の改良機「エルフA2型」の設計に着手。滋賀県が「菜の花栽培実験事業」を実施。

2000年 シンポジウム「バイオマスエネルギーは未来を拓く」を開催。菜の花の咲く愛東町で「アースデイ滋賀2000」を開催。鹿児島県、福井県などに「エルフA2型」導入。A2型をさらに改良すべく、エルフA3型の設計・製造に着手。秋の滋賀県環境ビジネスメッセの会場シャトルバス燃料に、滋賀県が廃食油燃料を利用。旧愛東町への視察が年間200組になり、全国への広がりに手応えが生まれる。

2001年 三重県、広島県に「エルフA2型」プラント導入。4月、菜の花サミットを旧新旭町で開催。27道府県から500人を超える参加者を集め、このサミットで「菜の花サミットの全国持ち回り継続開催」と「菜の花プロジェクトネットワークの設立」が合意される。

【第4期】バイオマスを活用し、農と暮らしと地域の復興の活動を展開している時期

2002年 第2回全国菜の花サミットを青森県横浜町で開催。サミットにおいて、菜の花プロジェクトネットワークの規約、役員が承認される。国が一府六省からなる「バイオマスニッポン総合戦略」を発表し、地域モデルとして菜の花プロジェクトを取り上げる。九州地区での菜の花プロジェクトの情報交換を行うための「九州菜の花サミット」が佐賀県伊万里市で開催。

2003年 第3回全国菜の花サミットを広島県大朝町で開催。サミットにおける問題提起を受け、旧新旭町をケーススタディにして環境と経済の好循環する地域づくりをさぐる「サステイナブル・デザイン委員会」を3ケ年事業として開始。昨年度に引き続き、「第2回九州菜の花サミット」が熊本県本渡市で開催。

2004年 第4回全国菜の花サミットを茨城県八郷町で開催。「第3回九州菜の花サミット」が宮崎県で開催。未来世代の菜の花プロジェクトへの取り組みに焦点を当てたイベントとして「第1回菜の花学会・楽会」を静岡県大東町で開催。滋賀県竜王町がバイオマス利活用事業の助成を受け、BDF精製システム整備に着手。エコプロダクツ展でこの年に設けられた「エコプロダクツ賞」のエコサービス部門で、唯一のNPOとして菜の花プロジェクトネットワークが「農林水産大臣賞」を受賞。

2005年 第5回全国菜の花サミットを兵庫県五色町で開催。愛知県で開催された「愛・地球博」の開会式場を菜の花で飾るプロジェクトに協力。開会式で「未来プロジェクト」として、菜の花プロジェクトが紹介された。BDF精製プラントエルフが、「愛・地球賞」を受賞。国のバイオマス利活用事業の助成を受けて旧愛東町に完成した「あいとうエコプラザ菜の花館」の竣工と東近江市の誕生記念事業として「第2回菜の花学会・楽会」を開催。

 2005年10月17日

  特定非営利活動法人菜の花プロジェクトネットワーク